インタビュー

兵庫県豊岡市にある世界的な企業『BITO R&D』。社長の美藤定氏は、かつてヨシムラR&D、ホンダR&Dのレーシングメカニックとして世界一を手にした男。その美藤氏の世界一のクオリティーによって誕生したチタニウム製の手曲げマフラーや鍛造マグネシウムホイールは今もなお、世界のレーシングシーンで注目されている。そんな美藤氏が躍動の半生を熱く語った。

2014.5.13

初めてバイクに魅力を感じたのはいつですか?

中学2年生の頃、スーパーカブに乗ってみた時です。

このお仕事に携わろうと思われたきっかけは何ですか?

1977年、アメリカ放浪の旅の中、アルバイト先のヨシムラR&Dが火事になってしまい、私はアルバイトだったんですが、チームを作ってデイトナのレースに参戦してくれと頼まれ、それが3位に入賞したことがきっかけだと思います。その時、私にも世界一にチャレンジ出来る可能性が見えた。

それから開業されるまでのいきさつを教えて下さい。

1979年に一時帰国してズズキ自動車の要請でボルドー24時間耐久レースに参加し、その後もズズキ自動車で1980年用のマシンの開発を、しばらく浜松で取り組んでいました。1980年にはイギリスにスズキGBという会社があるのですが、そこに行ってくれと言われていました。同じ時期にホンダがレースを始めたいと誘われ、悩んだ結果ホンダに参加しました。そのあと3年ホンダに在籍しその後、豊岡に帰ってきた次の年、31才の時に開業しました。

創業当時の様子を教えて下さい。

創業当時はやはり大変でした。今までは基本的にサラリーマンでしたので、自分で商売をするということは初めてで、経験もなく感覚が全く分かりませんでした。アメリカやヨーロッパではレースの仕事をしていましたが、豊岡ではそんなお客さまは無く、大手メーカーとのつながりもありませんでした。

独立されてから特に印象深い仕事はありますか?

ある程度資本金があってスタートすれば良かったのですが、資本金なしでスタートしたものですから、やりたいような仕事にはなかなか巡り会えませんでした。現在では、仕事も順調に増え、世界最高峰のレース用ホイールも作っています。世界中にお客さまも出来て、強いて言えば、印象深い仕事は今現在の仕事です。

企業風土というものがもしあるとすればあれば教えて下さい。

本物、世界最高品質というのが我々がやりたい仕事であり、それが私たちの会社の標準です。世界で最高のものを我々は作って供給しているという事で、お客さまに貢献したい。ですから安くて悪いものにはあまり興味がありません。常に目標は最高品質の製品であり、サービスであるということを目指しています。

従業員に望まれることはありますか?

世界最高品質の製品、サービスを供給するという志を持ってチャレンジして欲しいと思っています。

これからの会社のビジョンについて教えて下さい。

変わらず継続していくことが一番大切だと思っています。常により良い物を探し求めて行きます。

バイクの楽しみを一言でいえばなんでしょうか?

一言では言えません。いろんな楽しみがたくさんあります。
バイクは道具としても面白い道具です。またスポーツとしても楽しめます。色んな楽しみ方が出来ると思います。それそれのユーザーが自分で探して行ってもらえればいいと思います。
レーサーはレースをすることが楽しいわけで、ツーリングで旅がしたい人は道具を越えた相棒として接し、感覚的には馬ですよね。(笑)そういうものとして楽しんでもらえたらと思います。
また機械が好きな人もいらっしゃいます。メカが好き、色んなものを組み立てて動かしたり機能させるさせることが面白いとか、バラしたり組んだり改造したりが好きな人もいらっしゃいます。それぞれに楽しみ方は多様で、ひとつだけではなく「あれもこれも」という方もいらっしゃいます。

バイク人生をふりかえっていかがですか?

最高の人生ですよね。

世の中にはバイクは危ないという声もありますが安全についての考え方を教えて下さい。

バイクはとても安全だと思います。危ないという事を言えば、リスクの無いもの、危険の無いものは、世の中にそんなに無いです。料理でも下手をすれば中毒で死ぬこともあります、そんな風に考えれば何でも多少は危ないわけです。オートバイをそんな風に見れば何も特別危ないものではありません。非常に安全で面白い有意義なものだと思います。しかしその為には技術とか知識、判断力は当然要求されます。アクセルを上げればスピードが出ますからね。当然コントロールする資質、能力が要求されるわけです。それは他ものでも言えることだと思います。だから特にオートバイが危ないといったことはないと思います。
ただ、事故を起こしたときは、車の様に鉄の箱で覆われているわけではないので、ケガをする確率は当然高いです。ですからそれだけ用心しなければならないというか、そうならないように準備をするわけです。たとえば山にでも川にでも水はあるわけですが、何を飲んでも平気なわけではなくて、やはり健康でいようと思ったら安全できれいな水を見分けての飲まなければなりません。そういった能力というのは当然問われます。生き延びるためにはそういうことが判断できる能力がなければ生きていけないのです。オートバイに乗ると言うことは、注意を必要とする思考能力とかそういうものが必要とされます。それは人間にとってはとても大切なことだと思います。

いまバイクに乗って行きたいところはありますか?

どこでも行きたいです。(笑)時間があれば、どこでも、バイクはとてもいいですヨ。

今一番大切に思われていることはなんですか?

課題としては私も62才ですので、そろそろリタイアの時期が迫っています。後何十年も寿命があるわけではありません。頭も体もまだぼけるまでにもう少し時間がありますから、後を継ぐ人を残していかないといけない。教育をしていかなければいけないと感じています。

これから何がしたいですか?

これからまだやることはあります。社員教育は当然ですが、プロジェクトとしては山を削って1万坪の工場庭園を造ることです。
今までに無い、田舎に公園のような工場のモデルをつくりたい。皆さんが持っている薄汚れた工場のイメージではなく、人間が人間らしく気持ちよく働けるそういった工場をつくりたい。従業員がそういう環境で働ける場所をつくりたいと思っています。

気になること、気になる人はいらっしゃいますか?

あんまりないですね(笑)。

これからの時代、人の暮らし方はどう変わっていくと思われますか?

暮らし方は変わらないと思います。それぞれの人がそれぞれの能力とか、自分に合った物を選んで、一生懸命働けるような社会だといいですね。時代や環境によってはままならない事もありますが、日本は今後さらに熟成した社会になっていくわけですから、わりと実現しやすい環境になっていくと思います。自分の仕事を一生懸命磨くことで社会、世界に貢献できるような人々を我々は後に残していかなければならないと思います。

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